PoC事例紹介 福山市役所 様

  1. 社会実装事例紹介
  2. 各PoC事例紹介(福山市役所様)

近年、国指定の天然記念物は1,000件を超え、さらには都道府県や市町村が指定する天然記念物も多数あり増加を続けています。その背景には、本来の文化財としての学術上の価値に加え、地域の生態系や生物多様性といった自然環境保護の観点のほか、地域振興の一環としての観光資源という位置づけ、さらには学術機関の研究など情報発信を通じた保護活動への関心の高まりがあると言われています。しかし、自治体職員の不足や保護活動を行う方々の高齢化などにより、必ずしも十全な対策は取られていません。

実証実験の舞台である福山市も同様の課題を抱えていましたが、PoCを通じてSkeedOzIoTデータ流通基盤技術の有用性が確認されました。

お客様が抱えている課題

  • 遠隔地のため、職員が現地の状況を十分に把握できない
  • 細やかな状況把握ができず、気候・天候など環境変化が与えている影響が不明
  • 高齢化を踏まえた継続的な保存・活用のための有効な手段の検討が困難

課題解決の成果

  • 現地に赴くことなく計測が可能
  • 常時複数のデータが収集でき、環境変化が与える影響が確認できる
  • 科学的知見の蓄積により有効な保存手段の確立に寄与できる
  • 通信コストも安価で、継続運用の負担が少ない

背景と課題

広島県福山市では新技術やサービスを活用する企業や研究機関の支援を通じた地域課題解決を目的に、実証実験プロジェクト「ふくやま実験クエスト」を推進しています。
対象課題は有害鳥獣対策や高齢者の居場所づくりなど様々ですが、多数の応募から採択に至るのは年間2件程度という狭き門。今回、SCSKが提案し採択されたのは「天然記念物の状況把握・分析の効率化」であり、具体的には山間部の急傾斜地に自生するエヒメアヤメの生育環境の把握です。
市では以前からこの天然記念物の保存のため、地元住民と保護活動団体の協力のもと、取組を推進してきました。
植物の生育状況の把握のためには、現地に赴き観察する必要があるため、収集できる情報の量も頻度も限られたものにならざるを得ません。結果、自然環境の変化が与えている影響など細かな状況が不明であることや、地元住民や保護活動を行う方々の高齢化もあり、今後も継続して保存・活用していくための有効な手段の検討が進まない事態となっていました。
こうした課題解消に向けて、SCSKは多種多様なIoTセンサからのリアルタイムで長期間にわたるデータ収集、ネットワークの堅牢性、通信費などコストの抑制を実現するIoTデータ流通基盤技術「SkeedOz」を用いた実証実験を提案しました。
採択された提案内容について、市の経済環境局文化観光振興部文化振興課の担当者は「他にも応募事案は複数あったが、総合的に本件の事案については課題解決に向けて最も適応性があるものと期待できた」と当時の印象を振り返ります。
無事採択されたSkeedOzですが、期待通りに天然記念物の生育環境観察に貢献できるのか確かめるべく、現地での実証実験に取り組むこととなります。

実証実験実施イメージ
・計8種類のセンサから発信されるデータを近傍のノードで収集し、ホップしながらゲートウェイに伝達。そこからクラウド上に蓄積し利用者が確認、利用する

解決策と効果

訪れたエヒメアヤメの生育現場は山道から脇にそれ、急斜面を上がり視界の開けた辺り一帯。その空間はすでにキャリア通信のほぼ圏外でありSIM搭載型のセンサを使ったIoTソリューションでは安定的な運用は難しく、給電設備もありません。
しかし、こうした環境でこそSkeedOzは真価を発揮します。
まず、センサについては設置場所や収集データの種類など、市の職員や地元のボランティア、大学の有識者の協力を得ながら検討を進めていきました。今回は土壌のpHや水分量、電気伝導度、温・湿度、照度、Co2濃度など計8種類のセンサとネットワークカメラをセットしています。
また、各センサデータを収集するノードやインターネット網への接続を行うゲートウェイ、ネットワークカメラなどの機器には搭載バッテリーとソーラーパネルによる給電システムを使い、長期間の稼働を実現しました。
これらの機器で構成されたSkeedOz独自のネットワーク網を伝い、約10Km離れた市役所庁舎において、常時、安定的にセンサデータや映像が確認できます。そこではパソコンやタブレット、スマートフォンなどマルチデバイスによるリアルタイムな映像参照や常時のデータ収集、表示、分析が可能となっています。
実証実験を通じてこの監視システムを構築したことに、福山市担当者は「当初の期待通りであり、これまで困難だった科学的なデータに基づく天然記念物の状況把握の出来る目処が立った。」と高く評価しています。


パソコンのほか、スマートフォン
アプリでも参照可能

今後の展望

エヒメアヤメの状況把握・分析は、今回の実証実験期間の後もSkeedOzを継続運用し、今後少なくとも数年間のデータを収集・蓄積することにより、精度を高めることが可能になります。
その上で、「今回の取組の成果を市内の他の天然記念物(植物や昆虫など)の生育環境の把握・分析にも役立てられるかもしれない」(福山市担当者)と技術的な有用性を感じています。
SkeedOzの革新性は、山あいの自然環境下においても十分生かされることが証明されたといえそうです。

お客様のプロフィール

  • 企業名  :福山市役所
  • 所在地  720-8501 広島県福山市桜町35
  • 人口   455,028人(202412月末)
  • 主な施策  :文化振興課(文化財担当)では、行政をはじめ所有者や関係団体、市民・地域活動団体など地域ぐるみで文化財を守り、生かし、未来へ伝える取組を推進しています。デジタル化を踏まえ、文化財の保存と活用をめぐる様々な課題解決の一つとして、IoT、AIを使った天然記念物の状況把握・分析の効率化に取り組んでいます。

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